陶土と森に恵まれた伊賀

鎌倉時代より本格的になったといわれる伊賀焼。伊賀焼が発展したのは、伊賀が良質な陶土の産地であること・薪に最適な赤松の森林が豊かであったことが大きな理由です。陶器生産に欠かせない土と燃料、そのどちらも地元で調達できることはとても恵まれた環境でした。昭和40年頃までは薪で焚き上げる登り窯を使っていましたが、その後石炭窯、電気窯との併用期を経て、今は燃焼性や熱効率の良いガス窯を主に使っています。
 

蓄熱力が高い伊賀の粗土

伊賀の陶土は400万年前に生息していた生物や植物の遺骸が多く含まれる堆積層で「古琵琶湖層」と呼ばれる地層から産出されます。高温で焼成すると遺骸の部分が燃え尽きて細かな気孔ができます。気孔ができた多孔質な生地は“呼吸をする土”と言われるほどの粗土で、遠赤外線効果が高く食材の芯までじっくり熱を伝えます。また蓄熱力が高いのでなかなか冷めず、火から下ろしたあともトロ火で煮込むのと同じ温度帯を保ち、食材の旨みを引き出します。伊賀の粗土のさまざまな性質を活かし、長谷園では火加減いらずで美味しいごはんが炊ける「かまどさん」や吸水性を利用した「陶珍菜」などの機能土鍋をたくさん作っています。また意外なようですが、日本で採れる陶土で土鍋になるほどの耐火度を持つのは伊賀の粗土のみ。そんな土のおかげで、伊賀焼は昔から行平(ゆきひら)や焙烙(ほうろく)などの民具を全国に発信してきました。長谷園では陶土という貴重な資源を宝物と考え、より良いものづくりに活かすことを常に考えています。
 

茶陶としての歴史も

伊賀焼の歴史は約1300年前、奈良時代にはじまり、茶の湯が盛んとなった17世紀はじめの桃山時代(伊賀国領主であった筒井定次や藤堂高虎・高次の時 代)には、古田織部などの指導で伊賀・丸柱で茶陶が焼かれました。高温の登り窯で焼かれてできる伊賀焼には、作品の表面に幾重にも降りかかった自然の灰が 溶けてガラス状になる「自然釉」と呼ばれる景色が生まれ、その一期一会の景色が茶道に通じ、茶陶として重宝されたと考えられています。
今でも年に数回焚き上げる登り窯で焼く陶器には、炎の朱色や自然釉といった独特の景色が現れます。伊賀焼の歴史に思いを馳せながらご覧いただくと、より一層伊賀焼をお楽しみいただけるかもしれません。

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